羅針盤

株式会社羅針盤代表の佐々木(@sasakifumito)です。チームではじめた地域プロデュース事業部コラムに初めて寄稿します。

コロナが明けて、「ガイドが足りない!」「ガイドが不足している」という声が日本全国から聞こえてきます。それを受けて、日本各地で「ガイド育成事業」が行われていて、弊社もいくつかの地域で支援させていただいています。「どうすればガイドが活躍出来る社会を創れるか」「どうすればゲスト満足度の高いガイドを輩出できるか」「どうすれば地域にも貢献できるガイドの支援が出来るか」ということについては、日本で一番考えている自信がありますし、トラベル事業で実践をしているという経験も他社にはない価値で、試行錯誤してきた各種プログラムをチーム一丸となって提供しています。

でも、「ガイド人材の育成って公共事業でやるべきことなんだっけ?」という論点も存在します。
立ち上げ期は仕方がないとして、「ガイド育成をすれば、ガイド不足問題は解消するのか」「それは持続可能なのか」という論点もあるので、別の問題提起ということで当コラムの筆をとりました。

結論を言えば、タイトルの通り「人材に投資ができるビジネスモデルを観光事業者が構築しようよ」です。

観光業は、平均に比べて収入が低いと言われている

そもそもの根源は、観光業の収益性の低さにあると考えています。

こちらの図表は1人あたり雇用者報酬の国際比較になります。
全産業平均に比べて観光及びその他産業や宿泊業は極めて低い水準です。
特に日本の差は歴然としており、観光及びその他産業は平均の54%程度ですし、宿泊業に至っては50%を切っている水準です。

観光庁「観光白書令和5年版

 

アメリカも相対的に低いですが、約7割弱ということで、日本ほどの差はないですし、スペインに至っては観光及びその他産業は全産業平均を上回っています。

観光業の報酬が低くても、その分会社が儲かっているのであれば、それはそれで一つの経営方針とも言えますが、あたり前にそんなことはなく、業界として収益性が好ましくないという状況です。

収益が上がらなければ、給料にも還元できないですし、マーケティング予算やシステム開発への投資も十分にできず悪循環に陥っていくリスクがあります。

ガイドの人材育成についても、本来は、便益を享受する事業者が担うべきと考えますが、現状そこに投資できる余裕がないという見方が出来ます。

(多くのガイドがフリーランスということもあり、事業者として育成義務もなければ、投資判断をしづらいところでもあり、本来の本来はガイドが自己投資をしてスキルを磨くべきでもありますが、ガイドも稼げていないという状況下においては、立ち上げ期に行政が支援するのは一つの解決策だという理解もしています。有効活用していきたいところです。)

 

通訳ガイドの採用で「善意の紹介」に頼っているケースは多い

自分たちとしても甘えていた部分もありますが、先日あるガイドの方のSNSへの投稿が心に残りました。

「エージェントから連絡があり、断ったところ、『では他のガイドを紹介してくれないか?』と言われた。なんでガイドを紹介しないといけないのか?ガイドに集中させてほしい」

至極ごもっともな意見でした。
でも、「善意の紹介」があたりまえのようになってしまっている現状への警鐘でもあるように感じました。
「特別な好意」によるものが「あたりまえ」になり、いつしか「権利」に変わっていく過渡期なのかもしれな、と。

そもそも、企業は必要な人材は自分たちで見つける必要があります。
そして、多くの企業にとっては人は大事な経営資源でもあり、採用・育成には結構な予算をとっています。

アルバイト求人を載せるにしても、1回数万円はかかりますし、正社員の採用に至っては年収の35%-50%が相場になりつつあります。
育成においても、企業研修は1人で数万円、1回講師を呼ぶと数十万円というのが一般的です。

多くの事業においては、そうした採用・育成コストを見込んだ収支計画を立てているものの、ガイドツアー事業においては「善意の紹介」に頼り、そうしたコストを見込んでいないと思われるケースも多々あるのではないか、と感じさせられました。

また、各都道府県・市区町村が、ガイドマッチングイベントを開催してくれており、その恩恵に授かっている面も大きいです。
本当にありがたい。でも、それが持続可能かというと、、、というジレンマを抱えています。

 

採用・育成は、事業者にとって根幹でもあり、投資が出来る経営が必要

観光においても「人」は最大の資源です。
それなのに、採用・育成への投資が出来る体制が出来ていないのだとすると、それは、ツアー運営事業者側の責任でもあります。

自分たちに言い聞かせる部分も多分にあるのですが、ちゃんと収益をあげて、人材等に投資をして、さらに魅力的なサービスを提供していくという好循環を回していく必要があります。
いいガイドと巡り合うために、媒体に出稿したり、SNS広告出したり、運用したり様々な手の打ち方があります。出逢ったガイドの方々がさらに魅力的なサービスを提供できるよう研修機会の提供を継続的にしていくことも大事です。

OTAの活用支援をする際も「20%の手数料かかるんなら掲載したくない」という声も聴きますが、売値を見直して利益をちゃんと取れるのであれば、20%の手数料かかっても、全く問題ない話だと思います。「値上げをすれば売れなくなるかもしれない」という意見もありますが、「かもしれない」で立ち止まるのではなく、「どうすればちゃんと売れるのか」を考えて実践していく段階です。

「適正な値段とはいくらか」「適正な値段で売るためにはどうしたらいいか」

そうした問いと向き合うことでこそ、より持続的なサービスの提供が実現できます。

ガイドの方々に研修プログラムを提供するのも一つの解決策ではありますが、ガイドの方々と協業しサービスを提供する事業者育成・経営力強化も重要だと感じています。

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羅針盤ではガイドコミュニティ「JapanWonderGuide」を運営しています。
ガイドの方への研鑽機会の提供、ガイドと事業者のネットワーキング機会の提供、ガイドの啓蒙活動を行うコミュニティです。

ネットワーキングという観点では、賛助会員となっている事業者のウェビナーの企画支援をさせて頂いたり、対面での交流機会を提供することで、多くのガイドと事業者のマッチングも実現しています。

今期(2024年9月―2025年8月)の賛助会員の年会費は10万円(税抜)~となっております。
運営費用を鑑みるとコミュニティの収益性を全般的に見直したいところですが、採用コストを考えると現状とてもコスパの良いコミュニティだと自負しています。

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