羅針盤

地域プロデュース事業部 COLUMN

2025年3月11日
プロモーション・販促支援・OTA活用

「OTAに掲載する」それだけで売れるわけがない!

株式会社羅針盤の佐々木(@sasakifumito)です。自分たちでツアーを企画・運営したり、着物レンタル店を展開したり、日本全国の観光事業者の支援をさせて頂きながら、この半年は観光庁の「地方部における観光コンテンツの充実のためのローカルガイド人材の持続的な確保・育成に向けた有識者会議」にも委員として参加させて頂きました。

ガイドの確保・育成に向けた議論の中でも、どう活躍の現場を創っていくか=コンテンツをゲストに届けていくか、という論点が取り上げられていました。今、新しい年度を迎えるにあたり、観光庁、文化庁、環境省等で様々な事業の公募がはじまりました。これまで以上に「販売」に重点が置かれているようにも感じています。

「販売」と言うと昔は「旅行会社」が真っ先に浮かんできたと思いますが、最近は「OTA」が良く取り上げられます。そのような環境下、「OTA掲載の支援できますか?」というご相談も頂くのですが、応募する事業者、そして、審査する委員の方に届けたくて、このコラムを書くことにしました。
(公募事業において、よく知っている方は事業者側に回ることも多く、審査する方は構造上現場感が不足している場合もあると思うので是非読んでほしいところです。)

「OTAに掲載する」は必要条件であり、十分条件ではない

まず前提として、OTAは、Online Travel Agencyであり、体験・ツアー分野で行くとtripadvisor/ViatorやGetYourGuide、Klook等が世界でよく使われています。

「OTA掲載の支援できますか?」と聞かれた時の答えはもちろん「はい」です。自分たちとしても相当活用していますし、各OTAの担当者ともコミュニケーションとっていますし、国内でも知見が相当溜まっている方だという自負はあります。ただし、掲載の支援だけだと「売れる保証はないですよ」という条件が付きます。10年前は日本語対応したサイトが各社なかったですが、現在は日本語の登録ページも用意されており、「掲載する」ことは、一部ハードルを除けば支援がなくても出来るようになってきています。

昔の観光業界において、「旅行会社に売ってもらえれば、お客様を連れてきてもらえる」という成功体験があるからなのか、OTAに掲載すれば勝手に売れると思っている印象すらあります。

でも、OTAは、単なる流通チャネルの一つにすぎません。
言ってしまえば、商品を「商品棚に並べる」という行動が、「OTAに掲載する」という事です。魅力ない商品や高すぎる商品だったら、商品棚に並べても売れるわけがないですし、いい商品であっても商品棚の足元だったり、はじっこだったら、多くの人が見過ごしてしまうかもしれません。

これは、当たり前のことのようですが、どうも販売のために「OTAに掲載する」ことが目的化してしまっているケースがあるのも事実です。

ちょっと知識を身に付けて、「東アジア圏はKlook、台湾はKKDAY、欧米狙うならtripadvisor/ViatorまたはGetYourGuideだよね」というそれっぽい提案に繋がったりもするのですが、個人的には中国を除けばまずは「tripadvisor1択!」くらいの勢いで考えたほうが成果に繋がるんじゃないか、と思っています。
これにも理由がありますが、それはまた別の機会に。

大事なことは、「Klookに載せること」「KKDAYに載せること」「Viatorに載せること」「GetYourGuideに載せること」がゴールではないし、多くの場合は載せるだけじゃ売れないから、載せた後売る方法も合わせて考えようよ、という事です。

少し極端に言い過ぎました。載せるだけでも売れるケースももちろんあります。その確率がいつが一番高いかと言ったら今です。桜のシーズン直前。多くのゲストが日本での体験・ツアーを探すタイミングですし、満席・満員になるコンテンツも多いため、新しい体験・ツアーでも露出を獲得しやすいです。

本気でやりたいなら、官公庁の事業を待たずに今すぐにOTAのサイトにアクセスして登録してみることをおススメします。そのスピード感がきっと成否を決めます。

売るためには、基本に忠実に地道に早くPDCAを回す

「OTAに掲載する」ことが目的ではなく、「売る」ことが目的なら、やることは極めてシンプルで4Pを抑えていくことになります。

①売れる魅力ある商品を創る(Product)
②競争力ある価格設定をする(Price)
③販路を創り露出する(Place)
④販路に向けた導線を創る(Promotion)

売るためにはこれら4つが連動するため、この③に当てはまるOTA掲載だけを支援しても売れる保証は出来ない、というわけです。この数年に日本で量産されてきた観光コンテンツを見ると、③に課題があるというより、①②に原因があるものも多数あります。そこと向き合わないと、いくら③④に力を入れても、お金がざるを通って流れて行ってしまうだけです。

いい商品を創るにはどうしたらいいかは、やってみてゲストの反応見ないと分からないですし、価格についても、他の商品を参考にして値付けしてみて、売ってみて反応を見たりしないと、机上で考えていてもはじまりません。ここでも試行錯誤をいかに早く回すかが大事です。

そして、OTA掲載した後の試行錯誤もとても大事です。

皆さんが楽天やAmazonで買い物するときって、どんな基準で商品を選びますか?

載せるだけじゃ売れないんです。
OTAの中で選ばれる存在にならないといけない。

その為にどうすればいいか。

写真を変える、タイトルを変える、口コミを貯める・・・
考えてみればとてもシンプルで、当たり前のことです。

でも、「口コミってどうやって貯めればいいかわかります?」っていう質問に答えられる人はそう多くないと感じています。Viator、GetYourGuide、Klook、KKDAY、Airbnb等々で、口コミは、誰がどこから書けるのかといった次のステップに売れるためのヒントが埋もれています。

「ツアー造成・販売事業」と銘を打って、商品を造成し、事業の最後にOTAに掲載して期末を向けるという案件もいくつか見てきました。
羅針盤の理想の伴走支援は、商品を構想したら、まずOTAに掲載して、その後ひたすら磨く機会を創るという進め方です。

前者だと、売れないだけじゃなく事業者がOTAの使い方すら分からないままログインしないままフェイドアウトなんてことにもなりかねません。

どうすれば、継続してゲストを迎え入れる状況を作ることが出来るのか。

目的から立ち返ってみると見えてくる答えがそこにあります。

「OTAに掲載する」ということが目的化せず、「売れるOTA掲載」が各地で進むと、日本の観光がもっと盛り上がっていくな、と感じています。

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