羅針盤

地域プロデュース事業部 COLUMN

2025年9月13日
DMO・観光地域経営

観光庁提供の個票データに見る「現地ツアー・観光ガイド」の実態

株式会社羅針盤の佐々木(@sasakifumito)です。

羅針盤では、ツアー造成・ガイド育成・OTA活用等を支援させていただくことも多くありますが、最近のコンテンツ・プロダクト造成の流れには少し違和感も覚えています。
街を歩いていると、ガイドを連れているゲスト、ツアーに参加しているゲストは、全体のごく一部です。
多くのゲストはツアーに参加せず、スマホ片手に日本を楽しんでいます。

「実際、どれくらいのゲストがツアーに参加しているかご存じですか?」

もちろん、ツアーの方が消費に繋がりやすかったり、最初に来てもらうにはツアーが効果的だったり、ツアーの方がより魅力を理解してもらうことができるので、ツアー造成することを否定するものではありません。むしろ、ツアーの価値は大きいので積極的に推進したい。ただ、ツアーはどのターゲット層に有効なのか、ということは、もっと抑えたほうが良いと思いますし、同時に今後はツアーに参加しない方の行動のデザインも求められるのでは、と感じています。

昨年から、観光庁よりインバウンド消費動向調査の個票データの提供がはじまりましたが、そのデータを見ていきます。

「娯楽等サービス費」に含まれるガイドツアー消費

観光庁より定期的にインバウンド消費動向調査というものが発表されてきました。

2024年度は、8.1兆円でしたが、このうちツアー代は「娯楽等サービス費」に含まれます。

「娯楽等サービス費」は2019年の1,908億円から、2024年は3,817億円とほぼ2倍の成長を遂げています!
他費目と比べても大きな成長を見せているのですが、気になるのは、「娯楽等サービス費」って何が含まれるのか、ということです。

これが今までは把握できていなかったのですが、昨年から提供された個票データを見ると、内訳を確認できるようになりました。

「娯楽等サービス費」のトップはテーマパーク。続いて美術館・博物館等

アンケート調査票や個票データを見ると、娯楽等サービス費は、「現地ツアー・観光ガイド」や「ゴルフ場・スポーツ施設利用料」等12項目で分けてヒアリングされていることが確認できました。

それを、団体ツアー参加者を除いて費目別に、利用率と平均単価を算出してみると、費目によって傾向が全く異なることが見えてきます。

  • 利用率はテーマパークと美術館・博物館・動植物園・水族館が圧倒的に高い
  • 単価は展示会・コンベンション参加費が高い(そりゃそうだ・・・というところ)
  • スポーツ系は利用率が低い ・・・

(補足しておくと、並び順は調査票の順番です。)

国籍別の利用率等を考慮して計算する必要があるとは思いながら、この利用率と単価の掛け算をすると、ある程度の規模の比較も可能なのでは、と思い単純に掛け合わせてみたところ、テーマパークが規模としては一番になりました。

利用率は、美術館・博物館等だけど、単価の関係でテーマパークが大きい。テーマパークは、メジャーなところで行くと東京ディズニーリゾートやUSJが思い浮かびますが、そうなると単価も納得感があります。一度に受け入れられるキャパも大きいですし、これは何となく肌感覚にも一致します。

個人的には、「現地ツアー・観光ガイド」が3位につけていることが、ちゃんとツアーの市場もそこそこの規模があるんだな、ということを確認できたポイントでした。

ツアーの利用率が高い国は○○。単価は□□

では、ここで「現地ツアー・観光ガイド」に絞って、もう少し見てみます。

国別に、現地ツアー・観光ガイド利用率を見てみると、エリアによる傾向を見ることができます。
(ちなみに国の並びは、観光庁の調査票上、コードを振ってある順番となっており、東アジア→東南アジア→欧州→米州→オーストラリア→その他という並びになってます)

韓国の利用率が高いのは何を利用していると答えているからなんだろう、というのは個人的にも気になりますが、欧米豪の方が率も単価も高い傾向にあります。

  • 利用率が高いのは韓国・マレーシア・フィリピン・欧米豪
  • 単価が高いのは、英国・イタリア・米国・オーストラリアとイタリアを除くと英語圏
    • その次群もシンガポール・マレーシア・インドと英語系の国が多い

ただ、冒頭の問いかけの答えで行くと、多い国で利用率は10%程度です。少ない国だと5%を切ります。
鶏と卵なので、英語で提供するプロダクトが多いから、英語圏の単価も利用率も高いといえるかもしれませんが、肌感覚としても知的好奇心を満たすツアーは欧米豪圏との相性がいいと感じています。

この状況を地域側(行政・DMO)は理解しながら各種施策を取り組むことはとても大事です。
ツアー造成に取り組むのはいいけど、90%のツアーに参加せず旅している人にアプローチできているのか。

個人的には、付加価値の高いプロダクトは造成してモデルコース的に地域の魅力を発信しつつ、結果的にその発信を見てスマホ片手に来る人が発生するので、そうした方々への導線を整えてあげるというのが良いのではないかと考えています。

「導線を整える」というのは、単に、交通・宿泊を整えたり、アクセス情報・魅力を発信することだけではなく、来た人が楽しめるような現地での情報を整備したり、地域の人と共生できるような環境を整えることから、しっかりその人が地域経済に貢献できる消費の場所(キャッシュポイント)を用意していくことに至るまで含めてのことです。

そうした全体のデザインができると、より観光が地域にも貢献していけるものと考えています。

羅針盤では、地域・ゲストと向き合いながら、旅の目的地を創出し、日本の観光をリードすることで、日本の魅力で、世界を豊かにする世界を実現していきます。

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P.S.①
地域での施策の壁打ちはいつでも大歓迎です。いつでもお気軽にお声がけください!

P.S.②
羅針盤では、共にミッション・ビジョンを実現する仲間を募集中です。興味ある方は、求人ページをご覧ください。
不定期で、築地をともに歩きながらカジュアルに話す会等も企画予定なので、Twitter等もチェックください。

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※ざっとデータを見て集計していますが、そもそものデータの理解が正しくできていない面もあります。上記情報はあくまで一分析事例としてご承知おきください。

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