
羅針盤の佐々木(@sasakifumito)です。
前回の「二次交通問題解消に向けた、地域通訳案内士活用のススメ」に続き、ガイド育成関係のコラム寄稿です。
個人的にはこうした打ち手を列挙したものは好まないのですが、一定地域の参考にはなるかと思っています。
ちなみに、なぜ好まないかというと、形だけ真似することは容易ですが、全体の設計や背景の思想が真に大事なことでもあり、形だけ真似た「なんちゃって」を助長させることにもなりかねないからです。
大事なことは、ゴールから逆算した全体設計。
それを見失わないことが大事です。
こうした投稿をきっかけにそうした視点を持つ人が増えて欲しいと考えて投稿することにしました。
昨年度、観光庁で地方部における観光コンテンツの充実のためのローカルガイド人材の持続的な確保・育成に向けた有識者会議が開かれましたが、とりまとめにも取り上げられている育成サイクルを回していく必要があります。
羅針盤では自社のガイド育成、ガイドコミュニティの運営、行政事業でのガイド育成等手掛けてきた中で、様々な取り組みを実行・検討してきました。
粒度が揃ってませんが、各プロセスでどのような打ち手があるかをご紹介します。

出典:観光庁HPhttps://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001877395.pdf
ガイド人材育成に取り組む際、カリキュラムを考えるのも大事ですが、それ以上に「誰に受講してもらうか」という論点もとても大事です。特に、数回の研修では、大きく人を成長させることには高い難易度があります。ゴールから逆算して、スキル・モチベーションの高い方に参加してもらうことにも力を注ぎましょう。
「観光協会からボランティアガイド団体にお声がけする」は比較的見られるアクションですが、ボランティアガイド団体等に関わらず、既存団体へ協力依頼することは打ち手の一つです。地域のガイド団体、学生ガイドサークルも一つですし、通訳案内士団体・ガイドコミュニティ等も存在しています。
インバウンド旅行者が増える中で、ガイドに興味を持っている方は確実に増えています。一方で、ガイドの始め方が分からず一歩を踏み出せていない人もいます。SNSで広告を打つことで、そうした方へ情報を届けていくこともできます。
自治体であれば、広報誌を定期的に発行しているケースもあります。広報誌の影響力がどの程度のものかは地域によっても違いがあるかとは思いますが、某市で実際に発信したところそれを見た方から結構な応募があり、広報誌も使えるのであれば活用することに越したことはないと感じました。
研修の参加者を募集するのには向いていないかもしれませんが、実際に仕事を依頼するガイドを探す際には、Indeed等の採用媒体に情報を載せていくことも一つの有力な手段です。「仕事をしたい」という意欲を持った人が見る媒体ですし、ガイドの時給は、一般の業務より時給が高いこともあり、多くの人に見てもらえる可能性があります。
「類は友を呼ぶ」とはよく言ったもので、ガイドの方の周りにはガイドの方がいますし、素敵なガイドの方の周りには素敵なガイドがいます。リファラルを待つのではなく、能動的に働きかけることで、素敵なガイドさんに出会える確率も高まります。
「興味を持ってもらえること」と「応募してもらえること」の間には、大きな溝があります。この一歩を飛び越えてもらうためには、直接の声がけも有効な手段です。先日聞いたある地域では、「民泊の相談の窓口に来た方に、ガイド研修の案内をした」という話もお伺いしました。そうした一つ一つの積み重ねが、地域の財産になっていくのだということを感じました。
応募いただいた方全員に、研修・就業の機会を提供することができれば、それは理想的ですが、実際には、限られたリソースの中で取り組む必要があります。そうした際には、受講者を選考していくことも、検討すべき論点です。レベルがある程度揃うことや、参加者の多様性があることも大事ですし、利他的な方が集まりいいネットワークができると、より研修が有意義なものになっていきます。
実践から逆算して必要なカリキュラムを考えていく必要があります。「知らない・出来ない」状況から、どう、「知って」→「わかって」→「できて」→「身に付けていく」かを設計する必要があります。大事なことは、実践と自己理解を繰り返していくことだと考えています。
研修の入り口として、まず「知る」というステップも必要です。知識にしても、スキルにしても、まずは全体像を知って、理解する機会を設けます。個人的にはスクール形式の座学だけだと、理解が進まないので、島形式で、参加者にもアウトプットをしてもらいながら、理解を進めていく形式が必要だと考えています。
内容としては、知識(歴史・文化)やコミュニケーション等が挙げられます。
座学の延長ですが、ケーススタディも研修内容としては有効です。
「ゲストに行程を説明したけど、『もう昨日そこに行ったんだよね』と言われたらどうする?」みたいな問いを設け、考え、議論し、自分の引き出しを増やすこと。
ガイドには正解がなく、その場その場で考えなきゃいけないことが多いだけに、考える力を養うと同時に引き出しを増やすことも大事です。
ガイドは個人事業で、人からインプットを貰う機会が少ないことも成長カーブが立ち上がらない一因だと感じています。実地・実践研修ができればそれに越したことはないですが、まずは室内でロープレをやって、それに対してフィードバックを貰うことも大事な気付きの機会です。
座学やロープレで何をしなくてはいけないかを頭で理解出来たら、実際の現場でガイドをしてみることも大事な経験です。歩きながら話すことや、複数の人に対して話をすることの大変さ等は現場でないと分かりません。どこで立ち止まってどう話すのが良いか、相手のニーズをどう掴んでいくのか、自分がアウトプットして第三者からフィードバックを貰うことも大事な機会ですし、逆に第三者にフィードバックをすることも学びを言語化するきっかけとなり大きな学びになります。
ロープレや実地研修で検討しても良いのはビデオで撮影することです。ガイドしているときに、自分はどんな表情・表現をしているのかを見ることも成長には大事です。思った以上に表情硬いな、手がぶらぶら動きすぎているな、声に抑揚がないな、、、そうした癖はなかなか気付けません。工数はかかりますが、取り入れてもいいプログラムです。
座学で知識の研修をしているケースも見かけますが、個人的には知識の研修はどんどんE-learning化していった方がよいと感じています。知識は繰り返し見ないと覚えられないし、時間が経つと忘れるからです。権利の整理等は必要ですが、一度作成すればその後財産として活用していくこともできます。
今後日本全国を舞台にガイドする方も増える中で、自分の地域の魅力を多くのガイドに正しくゲストに届けてもらうために、そうしたガイドに、自地域の情報を提供するためにもE-learning化は有効であると考えています。
「やってみて学ぼう」と言ってもなかなかハードルが高いケースも多いです。山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」ではないですが、「やってみせ」のプログラムも体で理解できるという点でとても大事なプログラムです。
実地研修をしてもらう際に、参加者の負荷軽減という点で「台本/ネタ帳」を用意してあげるのも一つです。「どこで何を話せばいいんだろう」は、はじめてガイドする人が考えるのは結構なハードルです。ある程度、参加者全員の話の品質を担保するという観点でも、台本/ネタ帳は有効です。
ただ、ガイドはある程度ゲストのニーズに応じて話を変更する必要もあるので、あくまで「それ通りに話さなくてはいけない」ものではなく、ネタ帳程度に考えてもらう必要はあります。個人的にはそうした観点からも、英語に翻訳する必要はなく、英語化の部分は参加者が自分の表現で準備するのが良いと思っています。
英語に翻訳すると、それを頑張って覚えようとして、覚えたことを頑張って話そうとしている感が出てしまい、参加者が楽しめない、というケースを多々みました。正しい文法で伝えることより、楽しんでもらいたいという想いが伝わることが大事なケースは多いです。
カリキュラムを作る中で、認定制度等仕組み化にすることも一つです。ただ、認定制度は概念的には簡単ですが、ガイドのように評価の軸が難しい場合、認定の基準の設計が難しく、結果的に認定とゲスト満足度に乖離が出ると、制度の維持コストばかりがかかり、認定されることの意義等も薄れてしまうので十分な検討が必要です。
認定制度にあたって、他資格を取得要件等に組み込むことで、自己研鑽を推奨するというのは一つの仕組み化だと考えています。
研修しても、活躍の場に繋がらなければ、研修の場はカルチャースクールで終わってしまいます。
是非活躍の場もセットで設計をしていきたいところです。
活躍の場を創出する上では一番わかりやすいのは既に仕事を持っている旅行会社とのマッチングイベントを開催することです。近年、京都、金沢を中心に「ガイドが足りない」という声を多く聞くのでそうしたエリアではとても効果的です。また、クルーズ船が到着するエリアでもニーズは大きそうです。
旅行会社がツアーを作ってない・売ってない・催行していないエリアで旅行会社とのマッチングイベントを開いても、お互いに時間の無駄になってしまいます。活躍の機会がないのであれば、創りに行く必要があります。旅行者がまずほしいのは、その土地での鉄板ツアーです。ニーズが大きいものが、より多くの活躍機会の提供に繋がります。ポイントとしては初心者でも価値を提供しやすいツアーにすること。「非公開エリアに入れる」とか価値が付くと売れやすいし、初心者でもガイドしやすいです。
旅行会社もツアーやってないし、旅行者もまだ少なくて鉄板ツアーつくっても売れる見込みが薄いのであれば、ガイドにツアーを作ってもらうようディレクションするのも一つです。ガイドをやりたい人には、「ガイドをしたい」ではなく「○○の魅力を外国人に伝えたい」というモチベーションを持っている方も多くいます。それが旅行会社が持っているツアーや鉄板ツアーではかなえられないケースも多くあります。C2Cのマッチングも難易度が下がる中で、ガイドにC2Cサイトを活用してもらうというのも大きな打ち手の一つですし、旅先の分散化にも、より多様なニーズに応える受入体制の強化にも繋がります。
エージェントがガイドを探したいと思ったときに、ガイドを見つけられるか?という問いにしっかり対応していくことも市場活性化策の一つです。どんな情報がどこにあるといいのかを考えていくとより活躍の機会を提供することができます。
ネットワーキングをするにしても、C2Cサイトを活用していくにしても、ガイド自身が営業力を身に付けることはとても大事です。限られた時間・スペースの中でどう自分を魅せていくのか、ということを磨くことも市場活性化に繋がります。
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多くの打ち手を列挙してきましたが、全てをやることは時間的にも予算的にも難しいことと思います。
大事なことはこれらを搔い摘んで取り組むことではなく、ガイド育成事業のゴールから逆算して最適な設計を地域・地域で行っていくことです。
是非、ガイド育成をご検討の地域・事業者はお気軽にお問い合わせください。
また、ガイドの方も気になって覗いていただいている事かと思います。
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